【まえがき】 この『標準分かち書き』は、現代の日本語をカナまたはローマ字で書き表わすための「分かち書き」のよりどころとして提案されたものである。
分かち書きの規則
【1】ひとつの単語は、ひとつづりに書く。
(例) ヤマ, ノボル, オオキイ, コノ, トテモ, ソシテ, イイエ, ヲ, デス
◆ただし、【3】【4】の場合を例外とする。
〔注1〕複合語もひとつの単語であるので、【4】(1) (2) の場合をのぞき、ひとつづりに書く。
(例) ハナタバ(複合名詞), オモイダス(複合動詞)
〔注2〕接頭語・接尾語は、単語を構成する要素であるので、【4】(3) の場合をのぞき、それがつく単語と合わせてひとつづりに書く。
(例)
オチャ,
ヒジョウシキ (接頭語);
アリガタ
ミ, ロンリ
テキ (接尾語)
【2】単語と単語の間は、分けて書く。
(例) タイヨウ ハ ヒガシ カラ ノボリ、 ニシ ニ シズム。
◆ただし、【5】【6】の場合を例外とする。
〔注1〕連語・句は、単語の連なりであるので、それを構成する単語ごとに分けて書く。
(例)デ アル, トホウ モ ナイ, クチ ヲ ハサム, ネコ ニ コバン
〔注2〕補助動詞〔もとの意味を失って、他の単語につづいて補助的な役割をしている動詞〕もそれ自体ひとつの単語であるので、前の単語から分けて書く。
(例) ハル デ
アル, ハナシテ
ミル, オシエテ
アゲル, ゴラン
クダサイ, オユルシ
イタダク, ケンキュウ
ナサル
【3】次のコトバは、語幹と語尾をそれぞれ単語とみて分けて書く(連語の扱いとする)。
(1)形容動詞および形容動詞型活用の助動詞
(ア)形容動詞(ダ型活用)
(例) シズカ ダ, シズカ ナ, シズカ ニ
(イ)形容動詞(タルト型活用)
(例) ドウドウ タル, ドウドウ ト
(ウ)助動詞「そうだ(様態)、そうだ(伝聞)、ようだ、みたいだ」
(例) ハレソウ ダ, ハレル ソウ ダ, サムイ ヨウ ダ, オクレル ミタイ ダ
〔注〕「そうだ(様態)」の「そう」は接尾語、その他の語幹は名詞、語尾は断定の助動詞とみる。
(2)副詞のうち、語尾「に、と」を含むもの
(例) マコト ニ, イッコウ ニ;
ハッキリ ト, キラキラ ト
〔注〕語幹は名詞または副詞、語尾は助詞とみる。
◆ただし、語幹に独立性がない(単独では現代語の単語として用いられることがほぼない)ものは、1語の副詞として、ひとつづりに書く。
(例) スデニ, タダチニ, マサニ;
オノズト, チョット, モット
【4】次の単語は、それを構成する要素の間を分けて書く。
(1)活用しない複合語で、おおむね7拍以上のもの
(どの部分もおおむね6拍以下になるように分ける)
〔基本的にカナ1字が1拍であるが、「っ」を除く「ゃ、ゅ、ょ」などの小書き文字は、その前のカナと合わせて1拍である。〕
(例) ウチアゲ ハナビ, コウソク ドウロ, オレンジ ジュース
◆ただし、6拍以下のものであっても、意味の理解を容易にするため、適宜分けて書くことができる。
(例) シゼン カガク, ロジョウ チュウシャ (漢字2字以上の漢語複数から成るもの);
モダン バレエ, キャッシュ カード (「カタカナ語」複数から成るもの));
デンシ レンジ, ユノミ ヂャワン (混種語)
◆なお、意味の理解をそこなうおそれのない場合、本来の組み立てにかかわらず、読みやすい分け方にすることができる。
(例) エイギョウ ブチョウ (<(エイギョウ+ブ)+チョウ)
(2)複合サ行変格活用動詞〔語幹と語尾「する」を構成要素とする動詞〕
(例) ウワサ スル, トク スル, ハンダン スル, デザイン スル; マットウ スル; サッパリ スル
◆ただし、次のものは、語幹と「する」を合わせてひとつづりに書く。
(ア)語幹が漢字1字の漢語で、かつ語幹と「する」の間に助詞「を」をはさむことができないもの
(例) アイスル(愛する), キスル(期する)
(イ)語幹が促音で終わるもの
(例) ホッスル; タッスル(達する)
(ウ)語尾が「ずる」になっているもの
(例)オモンズル; オウズル(応ずる)
◆なお、複合サ行変格活用動詞の語幹に他の動詞がつづくときも同じように分けて書く。
(例) ハンダン イタス, ハンダン デキル, ハンダン ナサル
(3)接頭語・接尾語を分けて書いたほうが意味の理解を容易にするもの
(ア)接頭語・接尾語が実質的に単語であるとみられるとき
(例)
ゼン カイチョウ (連体詞),
チョウ オモシロイ (副詞), シンブン、ザッシ
トウ (助詞)
(イ)接頭語・接尾語が固有名詞・数詞の前後につくとき
(例)ヨシダ
サマ, ヤマダ
タチ;
ダイ 1カイ, 3ワリ
ジャク
(ウ)接尾語が連語・句のあとにつくとき
(例) アイテ ノ ヘンジ
シダイ, オヤマ ノ タイショウ
テキ
【5】活用する単語の仮定形・未然形・連用形につづく助詞・助動詞は、前の単語と合わせてひとつづりに書く(この場合は、接尾語の扱いとする)。
(例) アルケ
バ (仮定形につづく接続助詞);
アルイ
タリ, アルイ
テ, アルキ
ナガラ, アルキ
ツツ (連用形につづく接続助詞);
アルキ
ナ (連用形につづく終助詞);
アルカ
レル, タベ
ラレル, アルカ
セル, タベ
サセル, アルカ
ナイ, アルカ
ヌ, アルコ
ウ, タベ
ヨウ, タベ
マイ (未然形につづく助動詞);
アルキ
タイ, アルキ
タガル, アルイ
タ, アルキ
マス (連用形につづく助動詞)
◆ただし、接続助詞「ても(でも)」は、原則として、「て(で)」と「も」を分けて書く。
(例) アメ ガ フッ
テ モ イク, タノン
デ モ ヤッテ クレナイ
〔注1〕接続助詞「ながら」が形容詞(型活用語)につづくときは、連体形につづくので、前の単語から分けて書く。
(例) セマイ ナガラ, メダタナイ ナガラ
〔注2〕形容詞(型活用語)や助動詞「だ」の連用形につづく「ない」は、形容詞であるので、前の単語から分けて書く。
(例) サビシク ナイ, オダヤカ デ ナイ, オトナ デ ナイ
〔注3〕助動詞「まい」が終止形につづくときは、前の単語から分けて書く。
(例) フセイ ヲ ユルス マイ
【6】次の場合は、原則として、合わせてひとつづりに書く。
(1)助詞「で、と、に、へ」、助動詞「だ」の連用形「で、に」のいずれかのあとに助詞「の、は、も」のいずれかがつづくとき
(例) タイシタ モンダイ
デハ ナイ , トモダチ
トノ ヤクソク, カレ
ニモ ハナシタ, ココ
ヘハ コナカッタ
(2)助動詞「だ」の連体形「な」のあとに接続助詞「ので、のに」がつづくとき
(例) ゲツマツ ナノデ イソガシイ, ニチヨウビ ナノニ スイテ イタ
【7】次の場合は、適宜ハイフンを用いて書くことができる。
(1)活用しない複合語を規則【4】(1)によって分けて書くとき、2拍以下の部分が離れてしまう場合(ハイフンでつなぐ)
(例) カリ-ケイヤクショ
(2)活用する単語のつづりが長いとき(ハイフンで分ける)
(例) ハタラキ-ツヅケル (複合動詞), オモシロ-オカシク (複合形容詞), タシカメ-ラレナカッタ (動詞+複数の助動詞)
(3)その他、意味の理解を容易にするとき(ハイフンで分ける)
(例) オオ-オトコ, フク-シブチョウ, セイヨウ-フウ, ムヤミ-ヤタラ, ノッシ-ノッシ
【8】特殊な場合は、この規則の理念を踏まえつつ適宜に書いてよい。
(例) ワカッテ ル / ワカッテル (< ワカッテ イル)(音韻のくずれた形);
イワズ モガナ / イワズモガナ, ス ベキ / スベキ (文語的な言いまわし);
アナイ ニ / アナイニ (方言)
【9】ひとつづりに書くか、分けて書くか、判断しがたい場合は、分けて書く。
(おわり)